超短読後感想『世界屠畜紀行』

世界屠畜紀行

世界屠畜紀行
内澤 旬子 (著)
価格:¥ 2,310(税込)

出版社を見れば、ひょっとして「そんな感じの教則的な本?」とつい身構えてしまう。だが進行はただ著者の興味の赴くまま、ひたすら日本や海外の屠畜事情について体当たりして見聞し、理解し、吸収してゆく様を描いている。

「食肉先進国」に生まれた我々は本の中で何度も強調されるように家畜が食肉になる過程を知らずに過ごしている。その前提で大量に肉を消費しながらとかく屠畜行為を忌避してしまう。いや「先進国」になる以前からこの国は極端に忌避し続け、奇形な身分制度を構築し、その後遺症を今に残す。このテーマを扱う以上、全く差別問題とは無縁でいられない。著者もしょっちゅうその壁にぶち当たる。でもこの本は、そのままずるずる路線変更することなく、ひたすら「屠畜」を追い続ける、その潔さ。

正直自分の血を見ることすら苦手ですぐ貧血ぎみになってしまうものにとっては屠畜の現場はあまりに過酷なものだろう。でもこの本は幸いなことに著者の軽妙な文章とユニークで微妙にリアルなイラストを添えてくれることで、かろうじて付いていくことができる。そして不思議なことに読了する頃には「いけるんちゃうか?」と錯覚させてもくれるのだ。

それでも所詮は頭の中で分かった気になっただけ、そこから先にはやはりなかなか進めない。それでもいままで知ろうとすることすらなかった世界を覗いてみて、かつおもしろいと思わせてくれるこの本は、とてもすてきだ。

2008.2/3のNHK「週刊ブックレビュー」に選者の一人として著者の内澤さんが登場。失礼ながら、あの達観したかのような突撃ぶりや自分のイラストなどから、「もうすこしお年を召されていらっしゃる」のかと思ってました。失礼…。で、紹介されていた3冊は“その筋”で通されてました。

眠れない一族 食人の痕跡と殺人タンパクの謎
ダニエル・T・マックス著 柴田裕之訳
紀伊國屋書店

けものたち・死者の時
ピエール・ガスカール作 渡辺一夫・佐藤朔・二宮敬訳
岩波文庫

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