iPhone葬送曲
今回の購入から入手に至るまでの経緯を、「狂想曲(Rhapsody)」ではなく敢えて「葬送曲(Requiem)」と呼んでみました。
手に入ったんだからええやん、と一部からは言われましたが、内実はちょっと大変。
だれもこんなこと聞きたくないかもしれませんが。
さて入手できるかも、という情報が入ったのは2日の土曜。
少し前「週末iPhoneが入手するらしい」というソースを読み、いっこうにお呼びのかからない「はげ親父の店」を見限って電器屋をあたることを考えていました。
土曜に出勤した際、外出する人に「駅前の○ックカメラか寺町のソフ○ップ行ってiPhone買うてきてなさいよ!」と困った発言を連発して迷惑を掛けていたのだが、いやいや僕のファンは違いますね。
ちゃんと寺町ソ○マップを覗いて、「入荷しました、って張り紙ありましたよ!」と教えてくれるではありませんか!
すでにまだ昼過ぎというのに心ははやソフマッ○。自然と洗脳ソングが頭に満ちてきます。
しかしながら、とある人から役に立つならと渡された「ソフトバンク株主優待券」(新規購入したら1万円のクーポン券進呈)を家に忘れてきた愚に気付いてしまったのです!
すかさず家に電話しました。
Qさんはてっきり「まだ腰が痛いから迎えに来い」という電話だと思ったに違いありません。ところが電話に出ると「部屋に転がるクーポン券を探し出し職場前まで届けよ」という始末。すっかり呆れられてしまいました。あずきくんまで動員され、ほんと恐縮です。
葬送曲のテーマが流れ始めるのはここからでしょうか。続きは以下から。
あまりご機嫌麗しくないQさんからクーポンを託され、かたや意気揚々とソ○マップに向かう僕。直前に在庫確認も怠りません。入荷は16白のみ。希望の黒でなくともこの際拘りません。
四条を八坂さんの方に向かって十分。目的地に着きました。店頭の方も電話に出てくれた方のようで、話がスムース。すぐにテーブル着席で契約へと話が向かいます。
隣で話しているカップル(の女性)もどうやらiPhoneにした様子。iPodは使ったことがあるが、契約してからiPhoneってどうよと店の人に訊いている。かなり割り切った人のようです。
そんなことはさておき、何枚かの確認書類にチェックを入れていき、契約内容の説明をされます。「Wホワイト加入が前提」と言われようと「基本オプションパック(i)」も必要、と言われようと、少しはひっかかりますが愛は盲目。目の前のにんじんが「今」手に入るなら多少のことはかまいません。もともと留守電は入っておきたかったし。
…さて、ここで契約前にぼくからも3点お願いをしました。
まずは、既にソフトバンク携帯を所持しているので、今回は追加新規で購入したい旨。
株主優待を使いたい旨。
そして曲の第一主題、「割賦」ではなく「一括」での支払い。
iPhoneは実質価格が2万だ3万だと言われてますが、あくまでそれは条件が揃った結果だ、ということが分かっているかたもいらっしゃると思います。ソフトバンクの「新スーパーボーナス」なる制度を利用すると、本体代金を一括もしくは割賦で支払い、その分所定金額を通話料や手続料・通信費から月々差し引くというもの。その本体代金−割引が先ほどの2万云々になるのです。でははじめに一括で支払ったら幾らになるのか。今回の16白の場合、80,640円(3360円×24)なのです。…0円ケータイがまだ蔓延っていたら多分購入には至らなかったでしょうね。
おおかたは一時の負担がどっと増える一括払いをする人はたぶんそう多くないのでしょう。分割にしても一括と結果同額、不利になりません。メリットも同じ。気分の問題ですね。
そんな感じでつい「一括で払います」と言ったのがことのはじまり。言ったらもう終わった感じがしてあとは上の空。最後の契約確認でもふんふん♪と聞き流していました。で、最後に「以上でよろしかったですね。ではボタンを押します」といって“契約成立”となったときにハタと「あれ?さっき24回分割って言わへんかった?」と思い当たりました。すかさず「あのー、さっき一括って言いましたけど大丈夫ですよね?」と確認してからが、さあ大変。
どうもiPhoneの場合は「契約キャンセルができない(これもきちんと読んでなかった)」ようで、一度成立した契約をあとから変更するのがすごく難しそうでした。担当してくれた方も「本当にすみません!」と謝ってくださったりすごく誠意は伝わってくるのだが、いかんせん相手は機械。人間なら「しゃあないな」で済むものも済まぬときた。
冷静な大人なら「いや、やっぱり分割でいいですよ」と言っておけばいいものの、既にスタッフ同士で相談したりバックヤードに走っていったりするのを見ると発言撤回もままならなさそう。進むも退くも茨の道です。
そうこうしているうちに、8時、○フマップ閉店のお時間。店内には「蛍の光」がエンドレスで流れます。そう、まさに『新世界より』でいうところの第2楽章。気まずくも持参の本(ハリー・○ッター)を読んだり、iPhoneガイド本(薄いのですぐ読み終わる)に目を通したりで、プレッシャーをかけまいとするためか、居心地の悪さを紛らわすためか、できるだけスタッフの方と目を合わさないようにしていましたが、つい合ってしまうと「すみませんでした」と謝られてしまう。洗脳ソングがかかって欲しいと願ったのはおそらくこれが最初で最後でしょう。延々蛍の光はテンションさがります。
9時、光明。携帯片手にPCを操作しつつスタッフさんの表情もやや明るくなった感じ。で宣わく「あと5分くらいで目処が付きそうです。ついてはレジでお支払いいただけますか」(レジをわざわざあけておいてくれていたのはありがたくもほんといろんな人を巻き込んでしまったなと後ろめたさも)!ようやくきましたよこのときが。喜び勇んで腰の痛さも忘れて階段一段飛ばし。さっさとカードで支払い済まして戻ってみれば、机の上にはiPhoneの箱とソフトバンクの手提げ袋。さぁいよいよ手渡しの瞬間が近づいてきました。「あと少しですからお待ちくださいね」♪
と長調メロディーが出たぞと思わせてここから再びドーンと短調へ。再び顔が曇るスタッフ。電話でのやりとり。待つこと約30分。そして…。
「本当に申し訳ありません!本日中に処理を終わらせられませんでした。
商品も今日お渡しできないんです!(゜ε゜;) 後日郵送などさせていただきますので、
本日はお引き取りいただけますでしょうか」(゜◇゜)
頭ではしょうがないと思いつつ、すごい徒労感。そして後悔。がんばってくれたスタッフさんを思いなるべく態度に出さぬようにしつつも、人影少ない四条通を歩いているとなぜか悲哀も感じました。
家に帰ればやはりご機嫌麗しくないQさん。これ以上傾かぬよう細心の注意を払っていれば、しだいに疲れていつの間にか居間で寝てしまってました。
第3楽章(葬送曲なのに?)。またまた『新世界より』でいうところのスケルツォ。実はぼく、この3楽章が一番好きです。大展開する4楽章よりも、適度な焦燥を奏でるメロディ、何かが起こるかもと訝る不安と期待の混合。それが見事に表現されています。いや、そんなことはどうでもよろしい。翌日の日曜。
この日も出勤。ちょっと喉が痛みます。午前中に携帯が鳴って、「お待たせしました。処理が終わりました!」とのやや上気した声。あぁ終わった。全てが済んだのだと見上げました。出勤で近くなので昼に取りに行く旨伝えました。
手洗いにいくと、鏡に映る見慣れぬ目の下のクマ。ん?と予兆を感じてしまったのが悪かったのか、そこから少しづつ体が鈍くなる錯覚を覚えました。
昼、炎天下の四条通、アーケードがあるとはいえなかなかその恩恵にもあずかれません。これもいけなかったのか。地上をひたすらずんずん歩きました。少し体力を消耗しつつようやくついたソフマ○プ。捲土重来です。店頭にでていた昨日の担当スタッフさんは顔を見るなり「ご迷惑をおかけしました」と丁重に謝られる始末。こちらもことさら恐縮してしまうのだが、おかげで唯一溜飲を下げることができました。席に着き、最終的な契約書にサインをして成立。ここに至るまでに如何ほどの血が流れたのでしょう。不毛なるデジタルビジネス社会。その弊害を勝手に我が珍事に置き換えあらぬ方向につい立腹してしまいました。
するとスタッフさん、謝意を表すためにグッズてんこ盛り&(たぶん自腹)ジュンク堂包み紙付きiPhoneガイドをくださるとのこと。本当にここまでしてもらいすみません。ついにこっちが謝ってしまいました。でも「お父さんってしゃべるんだー!ストラップ2」が二つもらえたのはちょっとうれしいですね。
で、店頭まで見送られて意気揚々と帰る気持ちと裏腹にどんどん足取りが重くなる。職場に着いたときには口と肩で「はぁはぁ」呼吸をするありさま。お弁当にも箸が進まず、そうこう食事を終えるだけで休憩時間が終わってしまいました。ここから体調はどん底へ。
で、第4楽章、アレグロ。腰はじんじん痛み出す、手足はしびれる、悪寒は走る、歩行はふらつく、で仕事にも身が入らず。途中で帰るには程悪く時間も経過しており、ままよとそのまま居続けたら、回復するどころか悪化する一方。電話応対していても呼吸が荒くなり満足に思考もできない。そういうときに限ってヘビーな用件が複数かかってくるんですよね。
予め「体調優れぬため迎えに来られたし」とQさんにメールを打って、規定時間になったらすぐに帰宅しました。
検温すると39度!平熱が35度を下回るときもある人間には恐ろしい高熱です。途端に隔離され、あずきくんを拝むこともままならず、ひたすら自らの不調と闘うことに時間が費やされました。
幸い、なのか残念なのか、翌月曜はお休み。でも療養生活。朝検温すると37度。まだ充分に高めとはいえ一気に低下しています。
病は気からというわけでしょうか、それで楽になったと思ったらちょっとづつ身も軽くなり、夕方前にようやく念願のiPhoneをアクティベートすることができました。
入手のため店に赴いてから約2日を経て今我が所有物となったiPhone。産む苦しさを味わった分、愛情はひとしおです。