京都LRT導入実験に思うこと

昨24日より、京都でのLRT(軽量軌道交通)導入を目指し、バスをLRTに見立てての交通社会実験が始まった。
京都市の計画では出町柳から今出川通を通り、白梅町までの4.1キロで運行を予定している。なんでも、いずれは叡電(出町柳)・嵐電(白梅町)との相互乗り入れを図り、日頃より慢性的な渋滞を見せてバスの定時運行が難しい観光地間の旅客運行を円滑にすることが目的らしい。

出町柳付近では鴨川や下鴨神社、京都御苑、銀閣寺などがあり、叡電から鞍馬や貴船に行くことができる。一方白梅町からは北野天満宮や金閣寺、竜安寺、仁和寺、平野神社、さらには嵐電を使って嵐山を代表する景勝地をめぐることができる。現在同じ区間を複数のバス路線が走り、観光客はもとより市民の日常の足としても使われている。
併し乍、市民の自家用車やタクシー、そして車や大型バスによる観光客が近年増加の一途を辿り、ただでさえさほど大きくない京都の町のけして広くない京都の道路に、日常生活にも支障をきたすほどの交通渋滞をもたらし続けている。
京都が一層の観光事業に力を入れ、一方で市民にとっても住みよい環境を提供するのであれば、これ以上の交通弊害を看過することは許されない。今、行動を起こさなければいずれ破綻してしまうだろう。

LRT導入には賛成だ。
ドイツ旅行では、フランクフルト、マンハイム、ケルン、ライプツィヒ、ベルリンと訪問した都市のどこでもLRTを見たり乗ったりした。(切符の購入方法など乗り方はちょっとわかりづらかったが)利用がしやすく、なにより快適だった。LRTの有効性とドイツなどでの浸透ぶりを肌を以て実感させられた。京都でもLRTが走ることになれば、そのメリットはきわめて大きいだろう。
では現在の計画のまま導入へと進めてよいか、ということに至れば躊躇せざるを得ない。それは以下の点による。

・導入が繁華街や主要駅からでない。
 →現在の計画では観光地を多く抱える地点をむすぶもの。観光客にはメリットは大きいが、地元民にはデメリットになりかねない。利用者の大半は観光客になるだろう。すいすいと観光客を運ぶ一方で地元市民には一層の苦労を強いるというのでは本末転倒だ。観光都市といえど市民の快適な生活無くして町を挙げての観光客を歓迎する土壌は育たないだろう。ドイツドイツと余所の話ばかりで恐縮だが、中央駅を起点として(循環もある)、街の主要ポイントを効率よく運行している。
・抜本的交通施策なくしてLRT単独導入は逆効果
 →今回の実験では今出川通の真ん中にLRT(に見立てたバス)を走らせた。京都新聞によれば「市バスだと約二十分かかるが十一分に短縮される」とある。だがLRTの円滑な運行は逆に一般車両はより渋滞が酷くなる。特に出町柳から堀川今出川までは道幅が狭く、LRTですら単線運行になる。ドイツでのLRTは基本的に道幅の広いところを走る。LRTによって渋滞を招くといったことにはならない。公共機関で効率よく客を運ぶ一方で、今でも多すぎる自動車を減らす施策を出さなければ、「渋滞解消」といった交通問題のみならずアイドリングなどによる環境悪化にも繋がりかねない。根本的に自動車利用を減らす施策の実施とそれに替わる手段の提供は両輪の関係である。いずれが欠けても成り立たない。

実際に計画と実験が公表されてまだ日も浅い。結論や熟考するにはもうすこし時間もかかろう。だが、今の時点で思うままに提言してみたい。
・LRTをはじめに導入する路戦は、「出町柳」−「白梅町」でいいのか?
 せっかく導入するのだ。どうせなら、「皆に利用してもらって」「採算がとれて」「アピールもしやすく」「デメリットが少ない」ようにしたい。そうすれば、次の一手も打ちやすかろう。
 たとえば、京都駅から堀川通経由で二条城あるいは河原町経由の御池(市役所)までの路線などはどうだろうか。今でもちょっと乗り換えれば、地下鉄を使っていけなくもない。ダブる。けれども沿線での利用も十分見込めるだろうし、夜もけっこう早くにストップしてしまう地下鉄では物足りないと感じている人も多かろう(自分も、大阪で飲んで帰ってくるととたんにタク利用になってしまうのを憂いている一人だ)。もう少し遅くまでLRTを動かすこともおもしろい。堀川通では道幅も十分確保できる。
 マンハイムの中心街では、トランジットモールが実施されていた。自動車の通行を止め、歩行者とLRTが不自由なく行き交うことができるようにするものだ。広場には多くの市民が憩い、通りを自由に歩行者が横断する。賑わいもすごくある。何より車に対するプレッシャーを感じることが無く、歩いて気持ちよかった。荷物の自動車による搬入ができない、など地元民に一定の不便を強いることもでてくるが、其れを補うだけのメリットもあるだろう。四条通や河原町通では書店が撤退してパチンコなどのアミューズメント店舗が目立つようになってきた。このままでは繁華街の将来も危ぶまれる。暴論に聞こえるかも知れないが、思い切ってトランジットモールを導入してみたら?
・自動車の総量規制、タクシー事業者への見直し、小型車購入に対する助成などの対策を
 一方で、京都の道をもっと動きやすくしなければならない。市民にも負担を強いることになるが、時間帯による通行規制などで、京都における自動車利用に対しての意識改革を浸透させることが必要だ。自分も猫田さん(プジョー306)を所有し、京都市内を常々走行している。昔はどこに行くにも車を使ったりしたが、慢性的な渋滞や地元民やタクシードライバーの運転マナーの悪さに嫌気が差したこともあり、今は代替手段でいけるところには無理に車を利用しないように心がけている(それでもけして燃費がいい車ではありません、ごめんなさい)。自動車利用には多少の不便が伴う、と思わせることができなければ増加し続ける自動車利用に歯止めを掛けられないだろう。
 また、市内に流入する観光客による自動車も留めなければならない。反対にこちらはPark-and-rideの奨励だ。近郊の駐車場で公共機関に乗り換えて京都に来た人には、主要寺院・スポットの入場料の減免や割引パスポートの発行などのメリットを享受させるなどで浸透を一層はかるべきだろう(そうした駐車場からLRTで市内へ、というのも当然ありだろう)。
 京都の道路で、絶えることなく労せずして見ることができるタクシー。いったい何台のタクシーが営業しているだろうか。不景気によって、走行台数を確保することで寡占化を図ろうとする事業者の争いがタクシーの台数増加に拍車を掛けた。いま、たとえば京都駅前のタクシー乗り場や塩小路通はタクシーでいつも溢れてしまっている。タクシー乗り場に入りきらずに待機したり、客待ちのために路肩で停車するタクシーが渋滞を発生させる。エンジンをかけたままだったり。また、全てのドライバーがそういうわけではないが、走行マナーの悪いタクシーも多い。客でない歩行者や自転車などは逆に邪魔だと謂わんばかり。たしかにタクシーは便利だ。観光客だけでなく必要に応じて市民もタクシーを利用する。だが現状はそれ以上にタクシーによる弊害が目に付く。営業規模を事業者ごとに任せず、市がバランスを取って調整してはどうだろうか。行政による過度な介入になるのかも知れないが、環境局職員らによる度重なる不祥事を誤魔化そうとするかのように立て続けに強力な景観条例等を制定しようとする京都市のそのバイタリティーならできなくはなかろう。
 京都でも開発・建設は継続して進んでいる。それに伴い、ダンプやミキサー、トラックなどの大型車が闊歩している。その中には充分排ガス対策を施していないものも多い。京都議定書などで環境配慮を高らかに謳う京都市ならば、排ガス規制や事業者や地域ごとでの走行規制を考えるべきだ。もっとも、これはLRT導入・渋滞問題とあまり関係がない。
 狭い京都に似合わず大きな車が往々にして幅をきかす。土地柄にあった車を走らせることで、ちょっとでも“動きやすい”道路にしたい。排気量や車長、車高が小さい少ない自動車を選んでくれる市民に対し市が助成を行う制度はどうだろう。京都ではハッチバックが(そして猫田さんのような)小型車が似合う、と密かに思っている。

京都新聞の大見出し『定時運行に高い評価 京都市のLRT交通社会実験 モニター客「早期の開通を」』とある。中見出しとして『渋滞、不満の声も』とあり、記事中で反対・不満の声も聞かれた、とふれられているが、京都新聞のスタンスがよく見える例だろう。だがもう少しだけ、じっくりと議論を尽くした方がいいだろう。よりよい京都にするために、だ。

参考良文:ウィキペディア

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